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法人向けクラウド・ネットワークサービスのINAP Japan

ゆるブラック企業 

2022年04月01日

 最近、ブラック企業ならぬ「ゆるブラック企業」というのが問題になっているとのことです。社員同士はほのぼのと仲も良く人間関係のストレスも無いものの、とにかく仕事がゆるい。特に成果を求められるわけでもなく、残業も無い。若い社員は、これでは成長できないし将来転職もできなくなってしまうと強い不安を抱えることになってしまうとか。この話を聞いて、私は特に驚きませんでした。むしろ「やっぱりか」という思いが強かった。ある調査によると、自分の働く会社がゆるブラックだと思う人は50%近くいたとのこと。それに対して、普通だと思う人が20%程度、真正ブラックが10%程度だったそうなので、とすると、もはやブラック企業よりゆるブラック企業の方がはるかに大きな社会問題になっているということになります。さらに企業規模で見ると、ゆるブラック企業は圧倒的に大企業に多いそうなのです。

 考えてみると、これらすべて思い当たる節があります。近年、大企業と仕事をするととにかく話が進みません。そもそもコミュニケーションのスピード自体が以前に比べ大幅に遅くなっており、メールの1往復にも月単位の時間がかかることも少なくないですが、同じ内容を何度も違う人から聞かれたり、同じ書類の提出を何度も求められたりします。ビジネスモラルも著しく低下している。私が社会に出た30数年前には、自社内の事情を外の人に対する言い訳に決して使ってはいけない。それは外の方には関係の無いこと。一人一人が自社を代表していることを肝に銘じるように、と厳しく教えられたものですが、そんなことは今は昔、最近は「上で決まっていることなので私にはわかりません」という回答が堂々と横行しています。ひどい時には、内部で仕事のなすりつけ合いをしているメールのやり取りに、意図的に取引先も入れてくる。「このメールを見れば、当社内で誰が悪いかわかるでしょう?」とでも言わんばかりですが、こちらとしてはそんなことはどうでもいい。とにかくやるべきことをやって欲しいだけなのです。

 技術が大きく進歩しているのだから、業務に時間がかからなくなるのが当然です。それなのに、これまでは働く自己の尊厳と残業代の維持のために会議の数を増やし、そのための資料作りと根回しの芸術化を推進してきた。それがリモートワークでできなくなってしまったからやることが無くなり、残業も無くなってしまった。これが企業の「ゆるブラック化」の本質ではないかと、私は勘ぐっています。残業が無くなるのはいいことだと思います。パワポのお絵描きでいくら残業などしても人間は成長しません。そもそも、働いた時間数×単価で報酬を決めるというのが既に時代に合っていないのです。

 しかし、それでも世の中から仕事が無くなってしまったわけではないのです。ゆるブラック企業というのは残業が無いだけではなく、明らかにやるべきこともやっていない。私はそう思います。一説には、最近よく言われるようになった「ジョブ型の働き方にすればゆるブラック問題は解決するのだろう」というのがあります。しかし、私はそうは思いません。ゆるブラック企業が仕事ができなくなってしまっている理由は、各人の業務内容と責任が不明確になっているからではないでしょう。むしろ、そんなものを明確にしてやたらと組織の細分化を図ろうとすることも仕事をやりづらくする一因に見えます。きれいな組織図と権限表が機能したなどという話は、古今東西聞いたことがありません。

 それよりもゆるブラック企業において問題なのは、誰も判断することを許されていないということでしょう。最近はコンプライアンスなるものが過剰に重要視されていて、ちょっとした問題が起きるたびにそれを防ぐための新しい法律ができ、それを遵守するためのマニュアルやひな形がどこかの専門機関から出されます。確かに、それに従えば特定の問題は極めて起きにくくなるかもしれませんが、そこに書かれていることはあまりにも非現実的であり、それを守ろうとするともはや身動きがとれません。しかし、何か問題が起きて自分に責任が押し付けられるかもしれないことを考えれば、誰もこのマニュアルやひな形を柔軟に運用しようなどという判断はできなくなってしまうから、ただひたすら、マニュアルとひな形をその意味や目的も考えずに外部にも押し付ける。だから仕事ができないのです。

 人間が仕事によって成長するとすれば、それは残業からではなく、判断し、行動して、その結果について外からフィードバックを受けることによってです。そのフィードバックは時にお褒めの言葉であり、時には厳しいお叱りの言葉でもあります。またそれは、納得のいくものであることもあれば、理不尽と感じるような不合理なものであることもあります。それでもそのフィードバックに一つ一つ向き合い、喜怒哀楽を思い切り全開させることによってしか人間は仕事から成長できないのです。そうすることで初めて、高い洞察力と判断力、そしてそれを超える直観力が開発されていく。これこそが、仕事ができるようになるということです。

 ゆるブラック問題の処方箋、それは仕事において判断し、行動できる環境の回復に尽きるのだと私は思います。そのためには組織をスリム化するなどの体制論もあるでしょうが、とにかく自分で判断し、行動する勇気の回復と心の問題の解決が、まず第一なのではないでしょうか。人間を委縮させ思考停止させるようなコンプライアンスは、もういい加減にして欲しいところです。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

 

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