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CEOニュースレター

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星野仙一

2019年11月

社員の1人が「チームで成果を上げるチームビルディングの進め方」という外部研修に参加して、その内容を社内で共有してくれました。そこに「成功しているチームの共通点は、心理的安心感があること。チームメンバーに怯えや羞恥心を抱かせず、本来の自分の力を伸び伸びと発揮できる環境であること」とありました。私もこういうマネジメント・スタイルは好きです。「アメとムチ」とか「躾(しつけ)」とかいう言葉は聞くだけで虫唾が走ります。実際に、このようなマネジメント・スタイルで成功することは多い。しかしながら、この研修で言っていることは事実として間違えています。恐怖と圧迫をベースとしたマネジメントで成功するケースもたくさんあります。と、ここまで考えた時に頭に浮かんだのが標題の人物でした。

星野仙一氏は言わずと知れた野球の人です。現役時代から「燃える男」と言われ、頭に血が上ると何をするかわからない。監督になってからもミスをした選手を殴るのは当たり前。アメリカのジャーナリストであるロバート・ホワイトニングはその著書の中で、米国では絶対にありえない行為だが、なぜかに殴られた選手も喜んでいるという“日本の不思議”としてその様子について書いています。それでも星野監督は国民には愛されるキャラであり、2016年に惜しまれながら亡くなりました。

 その星野監督のドキュメンタリーをYouTubeで見つけ、大阪出張の行き帰りの新幹線ですっかり見入ってしまいました。40歳代で中日ドラゴンズの監督として優勝した時と、50歳代で阪神タイガースの監督をやって優勝した時の密着ドキュメント取材です。

中日の監督時代はさすがに暴力シーンの映像こそありませんでしたが、確かに、ミスをした選手や納得のいかないプレーをした選手に対して、怒涛のごとく罵声を浴びせかけている映像がふんだんに収められています。怖いのでベンチでは誰も監督の傍には近寄りません。ただ、その中でも別格の落合選手がまるで防波堤のように監督の隣に座っているのですが、2人が会話を交わすことはありません。インタビューでは、監督は自分のマネジメント・スタイルに絶対の自信を持っており、「私は、たるんだプレーやミスは絶対に許さない。その場ですぐに指摘する(殴る?)」と意気軒高に答えています。試合でミスをした外野手が試合後一人、球場で居残り特訓させられている様子もありました。


 私は、こういうのって意味があるのかなあと疑問に思います。殴られたり居残り特訓をさせられたりすれば、ミスはしなくなるものなのだろうか?委縮してかえってミスが出やすくなるのが普通なのではないかと思うのです。それでもこの時の中日が優勝できたのは、この組織がプロ野球選手という特殊な人達で構成されていたからでしょう。プロ野球選手にとって一番怖いことは、殴られることでも居残り特訓をさせられることでもありません。試合で使われなくなることです。殴ってもらえたり、居残り特訓をさせられるということは、むしろ「お前を使い続ける」という意味でもあるのです。考えてみれば星野監督という人は、使うと決めた選手は殴りながらもとことん使い続ける監督であるようにも見えます。もしかしたらこちらの方が、その日の調子でコロコロと選手を変える監督よりもチームに安心感をもたらすという逆説が成り立つのかもしれません。

さて、そんな星野監督が50歳代になって、今度はそれまで何年も最下位が続いた阪神タイガースの監督を引き受けます。前任の監督は“ID野球”の野村克也氏。その野村監督が退任前に面白いことを言っています。「この阪神というチームばかりはどうにもならない。なまじ人気があるもんで、選手にまったく真剣味がない。チヤホヤされて人間的にはまったくの子供。社会人としての基本がまったくなっていない。こういうチームにはもう恐怖政治しかない。鉄拳制裁で怖いからとやらせる監督しかいないだろう。」

 ということで星野監督就任。まあ、ちょっとできすぎた話で、この野村監督のインタビューはやらせっぽいですが、星野監督に鉄拳制裁が期待されたのはおそらく事実でしょう。ところが周囲の意に反して、どうも阪神ではあまり暴力は振るわなかった様子。インタビューでも、中日監督時代に比べてよく言えば謙虚、悪く言えば元気がなく見えますが、それでも阪神を優勝に導きます。この頃、阪神を突然快進撃を続けるチームに生まれ変わらせた星野監督のマネジメントが、経営のモデルとして日経ビジネスに取り上げられたことがありましたが、それに対しても馬鹿馬鹿しいという感じで、「そんな大それたことを。たかが野球ですよ。」と答えています。

成長なのか老化なのか、中日の監督時代とははっきりと変わっているのがわかります。ドキュメンタリーでは、それを象徴する事象が紹介されていました。大事な試合で絶対的抑えのエースが滅多打ちにされ、大量リードを覆されてしまった。マウンド上で茫然自失のその投手のもとに、普段はありえないことですが星野監督自らが向かいます。殴るかと思いきや、かけた言葉は「こういう日もあるが、明日につなげるためにも最後までしっかり投げなさい。」そしてインタビューでは、「投手のショックを考えると、あそこは監督の自分が行くべきと思った」と答えています。更に試合後には選手を集めて、「今日は監督の俺がまずかった。すまん。」と謝罪しています。これには大学時代からの盟友である田渕幸一コーチが仰天していました。

星野氏はその後も北京オリンピック日本代表や楽天ゴールデン・イーグルスの監督を歴任しますが、成功したとは言い切れないのかもしれません。ただかつての鉄拳制裁監督というイメージは薄れ、人心掌握に長けた指揮官という印象が強くなっていきました。最終的なこの評価は妥当なのではないかと私は思います。この人は終始、人間というものを大事にした人だったのではないでしょうか。それが、若い頃は鉄拳という形で表現されただけ。やはり冒頭の、「成功しているチームの共通点は、心理的安心感があること。チームメンバーに怯えや羞恥心を抱かせず、本来の自分の力を伸び伸びと発揮できる環境であること」というのはあながち間違えていないのかもしれません。

 

代表取締役 CEO  奥野 政樹

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